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『贋オカマと他人の恋愛』感想
贋オカマと他人の恋愛

 写真、栞を乗せたままでした……
 先日文学フリマ東京の時に柳屋文芸堂の柳田のり子さまにいただいた(!ありがとうございました)『贋オカマと他人の恋愛』、なかなかまとまった時間がとれなくてちょこ、ちょこと読んでいたのだけれど読み終わりました。初めタイトルが奇抜でなんのことやらさっぱりわからなかったのですが(笑)読み終えてみるとああ、確かにその通りの小説だと納得してくすっと笑ってしまう。
 出だしから引っ張り込まれました。そして、喜劇っぽいのに悲劇の予感を初めから醸し出していて、わくわくしながら読み進めつつどこかで不安を感じてもいました。男ばっかりの小説ってあまり好きなじゃないのかと自分で思っていたけどめちゃくちゃ面白かった……まあタイトルからしてもオカマの話です。登場人物は皆個性的でそれぞれ魅力的で。だから関係性も単純明快はっきりしてるのかと思えばこの話実はものすごく複雑な人間関係で最後の最後までびっくりさせられました。
 主人公は幼少より日舞をしていたマザコンの美男子で、頭を使って上手く生きぬいてるように見せつつ生きることに不器用、そして律儀で真面目過ぎる人だと思う。と、思ったら案外気障で、気障というかあんまりこういう言葉にぴんときたことがなくてそういう表現をしたこともなく正しい使い方かわからないけれど、「粋」な振る舞いをさらっとしてしまう。びっくりする。絵にキスするシーンとか。それでもやっぱり自分の適性を真剣に考えた上で何故かオカマバーでバイトをしてしまうなんていう突拍子もないことする程不器用で、何故かそれをうまくこなしちゃう程器用でもあって、そのうえでものすごく純粋な人。P53の「サッちゃん。」の一言にぐっときた。寂しくもあり逞しくもある。孤独でもあり深い友情で人と繋がってもいる。面白い人です。
 正直村上春樹については私は全然知らなくてノルウェイの森をむかし読んだことがあるくらいだけれど、好きな人の方がもっと楽しめるのかも? どうもあいまいではっきりしないまま生きていかざるを得ない終わった話とか、心のどこかにもやもや残ったまま必ずしも嫌な存在ではない人とか事とか、この小説ではそういうものに単純な答えを出さないところにも魅力を感じました。お話の世界観とお別れする寂しさ、読み終わるのがもったいないような感覚はこれまでたくさん感じてきたことが有るけれど、この本に関しては登場人物たちの逞しさのせいか彼らをとても信頼してしまっていて、このまま簡単には完結せず世界は続いていくのだと思わされ、愛着を感じながら私も淡白に自分の日常に帰れる。読後感が全く寂しくなく、その感覚にも面白さを感じました。だけども本当に出会えてよかった小説でした。
 それにしても伝統芸能の世界、古典文学の世界、着物の美しさとか、作者様の思い入れや造詣の深さが伝わってくる作品で、江戸文化等まったく知識が無かった私ですがとても魅力的に感じ、能なども一度見てみたいと思いました。
 ネタばれとか余計なことは書かないようにしたら上手く伝えられなかったですが本当面白かったです。
 
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posted by: nanori | 同人誌文学 | 13:10 | comments(0) | trackbacks(0) |-









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