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ひとりぼっちを抱きしめて (JUGEMレビュー »)
日本糖尿病協会,荻原 友未,滝井 正人
過食症になった1型糖尿病の女性と医師の往復書簡
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2015年秋文学フリマ東京本の感想その2 ※ネタバレ注意
頭真っ新な状態で読みたい方は一応ご注意ください。


『喫水線』表紙

ヨモツヘグイニナさま『喫水線』

というご本に出合って。
 よもつへぐい、というのは多分古事記のあれだろうと思ったけどヨモツヘグイニナって? と思ってとりあえずネットで探したら不思議なタニシみたいなのの写真が……ああ、になかあ。ということでこのタニシもまた面白かったのですがあんまりくどくど書くのも野暮ったいような気がするのでここでは省略……。とにかくこの表紙のように、暗い水の中を思わせる不思議な話のご本でした。今日はとりあえず一作品だけですみません、孤伏澤つたゐさま「迎え火」の感想を。

 一緒に入っていたもう一つの作品はまた時間ができたら後日もっと詳しく書かせていただくかもしれませんが、せっかくだから一言だけ。渦保さまの「海面のクラゲ」は何かものすごく可愛らしい。読み終わっていとおしくなる。まあ状況としてはいろいろ怖いんだけど。


孤伏澤つたゐさま「迎え火」 @tutai_k

 世界から見捨てられたような排他的な過疎の漁村で、数少ない子供として老人達から将来を期待されて育ってきた少女の話で、設定もそうですが情景から暑い季節の汗だくな砂ぼこりまみれな感じから何から、とても憂鬱な、うんざりするような重たい時間が淡々と流れていて。はちこは唯一の同い年の幼馴染りりと姉妹のように育つが、途中から進路が分かれた。それでも別にはちこの世界が大きく変わったわけでもなく、広い世界に飛躍していけたわけでもなく、一人で孤立していてずっともうずっと重苦しい。
 個人的な記憶ですが、子供の頃は親がドライブ好きで、あちこち家族で車で出かけて、ただ山道を周遊したりするだけで、観光地や商業施設に行くわけじゃないんで結構何もない街を通ることもよくあって、車窓から外を見ながら、古びた街の古い何でもない汚い店なんかが見えるとよく、こんなところに取り残されたくない、良かった、自分がこれからずっとここで生活するんでなくてと今思うと非常に失礼なことを思っていた。自分の家が田舎の方だったので田舎にうんざりしていた、というのもあるけどそれだけでなく何か、すべてが「通過点」に見えていた。自分はこんな通過点で終わるのは嫌、もっと先のせめて少しでも先の、少しでも楽園みたいなところに行きたいんだと必死に思っていた。
 はちこにはそんな発想がまるで無くて、中学を出ると漁師か海女になるものなのに、村の反対をおしきってまで何故か遠くの高校に通ったものの、そこで自由を満喫するでもなく友達もなく一人で過ごして、毎日村に帰ってくる。帰ってくるとバス停までりりが迎えに来ている。そうか、そういえば私にはりりがいなかった。家族は「普通に」いたけれど、りりはいなかった。そんなことをぼんやり思い出した。
 はちこは一人で絵を描くようになった。足を舟虫にたかられている女の絵というのは想像するととても不気味で、彼女が何故そんな絵を描いたのかわからないけれど、あの磯を物凄い速足で駆け回る不吉な舟虫には小学生の頃初めて遭遇して私は悲鳴を上げた。漁村で暮らす彼らには舟虫の1匹2匹恐ろしいものでもなかっただろうが、私には1匹岩陰に隠れるのを見るだけでも恐ろしい。イザナミを蝕む虫、蛆虫はともかく、ゴロゴロいう雷などという古事記の謎の鬼神は昔から私にはあまりよくイメージできなかった。でも足に凄い勢いで這い上がってすぐ腿まで到達するであろう舟虫だったら私は非常に恐ろしい。もしかしたらイザナミの手足にまとわりついていた雷というのはああいう足の速い虫なんじゃないかという気がしてきた。わかんないけど。
 この世界ではちこはどこかぼやーっとした霧の中にいて、他人のことも部分的にしか詳しく書いていなくて、いろいろ深く考えていないとか自分で言うくらいで、常に彼女が何を考えているのかはっきりとはわからない妙な感じになっている。どこまでが現実でどこまでがあちらの世界に属する話なのかすらわからない。はちこがこの世に生きているということだけはわかる。はちこは古事記の内容を知らずにこの女と舟虫(のような甲虫)を描き、りりはそれを古事記みたいと言った。確かに陸で死んだ人には蛆がわく。海で死んだら、何が屍肉にたかるんだろう。少なくとも幸せな死に方ではないのだ。絵はりりの手にわたり、その後は他の誰にも見られることなく朽ちていこうとしている。りりがどう言ったとか、古事記がどうだとか、なんとなく間接的で、はちこ自身が何をどう思っていたのか、具体的な言葉では書いていないけれど、情熱は直接的に書かれていないけれど、作品の最後の言葉が全てだと思った。そうじゃないようでいて、実は小説の全てが彼女の彼女を愛する言葉だったように思えて、美しくて寂しかった。彼女に執着し彼女に焦がれ狂おしく思い慕い、彼女の全てが彼女のものだった。
 
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posted by: nanori | 同人誌文学 | 20:36 | comments(0) | trackbacks(0) |-









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